こんにちは、板金ボーイです。
今回から、みんな大好きハコスカの全塗装をシリーズでお届けしていきます。
現在進行形の案件なので、一気には進みません。でもそのぶん、リアルな進捗を一緒に追ってもらえたらと思います。
第1回は、ルーフのパテ研ぎで発覚したラッカー塗料のちぢれ問題と、それを受けて全剥離を決断するまでの話です。旧車ならではの落とし穴が、いきなり出てきました。
ハコスカとは?
ハコスカとは、日産の3代目スカイライン(C10型、1968〜1972年)の愛称です。四角い箱のようなボディラインから「ハコスカ」と呼ばれています。
発売から50年以上経った今でも旧車ファンからの人気は圧倒的です。程度の良い個体は数百万〜数千万円で取引されることもあります。僕自身も旧車が好きなので、この仕事が来た時は正直テンションが上がりました。
ただし、古い車には古い車なりのトラブルがつきもの。今回はそれを思い知らされることになります。
今回の施工:キレイに見えたけれど…
入庫してきたハコスカは、パッと見では全体的にキレイな状態でした。「これなら作業もスムーズに進みそうだな」と思っていたんです。
ところが、ルーフをすかしてみると微妙な凹みが何箇所か見つかりました。叩くほどの深さではなかったので、軽くパテを盛ってサクッと終わらせる予定でした。

この時点では、この後に起きることなんて想像もしていません。
ルーフのパテ研ぎで違和感が出てきた
パテが硬化してサンダーで研ぎ始めたところ、すぐに違和感を覚えました。研げば研ぐほど、何かがおかしい。
塗膜の層がおかしい。下に隠れていたものとは
研ぎ進めると、塗膜が何層にも重なっているのが見えてきます。
ボディ色の白が剥けて、その下にまた白。さらに青っぽいグレー、白っぽいグレーと続きました。古い車なので、重ね塗り自体は珍しくありません。
問題は、最初の白だけ明らかに質感が違ったことです。他の層はなだらかに研げるのに、この白だけガサガサと不自然な剥がれ方をする。
これがラッカー塗料で塗られていた証拠でした。

パテに現れた「ちぢれ」の恐怖
ラッカー塗料が残っている上にパテを盛ると何が起きるか。答えがこちらです。

シンナーで一晩置いた結果
パテの表面にシワが寄っているのがわかると思います。このシワの位置が、ちょうどラッカー塗料が存在している部分です。

パテやサフェーサーに含まれる溶剤がラッカー層に浸透して、下の塗膜が膨張と収縮を繰り返します。それが表面にシワとなって現れるのが「ちぢれ」です。
このまま研いでも、また同じことの繰り返し。ラッカー層を根こそぎ除去しない限り、根本的な解決にはなりません。サフェーサーを吹いても同じリスクがあります。
試しにシンナーを含ませたウエスを一晩置いてみたら、ラッカー層が盛大にちぢれ上がりました。ちなみに僕は集合体恐怖症なので、この光景はかなりキツかったです。
腹をくくる。全剥離を決断した理由
オーナーとの相談と合意
ここまでの状況をオーナーさんに写真付きで報告しました。ちぢれの写真を見てもらったことで、「部分補修では解決しない」ということを理解していただけました。
お互いに納得した上で、ボディ全体の塗膜を剥離する方針に切り替えます。

部分補修ではダメな理由
「ちぢれが出たところだけ剥がせばいいのでは?」と思うかもしれません。
でも、ラッカー塗料がルーフだけに残っているとは限りません。ボンネット、フェンダー、ドア、クォーターパネル…どこに潜んでいるかわからない状態です。部分的に直しても、塗装後に別の場所からちぢれが出たら、またやり直しになります。
全剥離となれば、当初の予算からは大きく跳ね上がります。僕は体力的にしんどいし、オーナーさんは金銭的にしんどい。でも、納車後に塗装トラブルが出るリスクを考えれば、ここで腹をくくるのがお互いのためだと判断しました。
旧車の塗装で最初に確認すべきこと
今回の経験を踏まえて、旧車の塗装を依頼する方にも知っておいてほしいことがあります。
旧車はキレイに見えても、塗膜の中に「過去」が隠れています。 ラッカー塗料が残っている可能性、何層にも重ね塗りされている可能性、その下でサビが進行している可能性。見た目だけでは判断できません。
全塗装を依頼する際は、「過去にどんな塗装歴があるか」を事前に確認してください。そして、作業を始めてから予想外の問題が見つかる可能性があることも、頭に入れておいてもらえると助かります。
職人側もオーナー側も、「想定外」を想定しておく。これが旧車の全塗装で一番大事な心構えです。

今回使った道具
今回、塗膜の剥離で活躍したのがコンパクトツールの913C(非吸塵式ダブルアクションサンダー)です。
重量わずか0.55kgという軽さが最大の魅力で、一日中サンダーを握り続ける旧車の全塗装でも手が疲れにくいです。オービットダイヤは5mmなので研削力は穏やかですが、足付けやプラサフ研ぎには十分。低重心設計のおかげで安定感も良く、面に均一に当てやすいです。
エアプラグの部分がなぜか細いホースになっていたので、切って直結させて使っています。このちょっとした改造でエアの供給が安定し、回転のムラが減りました。
パッドを変えればMPS(マジック式)とLPS(のり式)の両方に対応しているので、ペーパーの種類を選ばないのも便利です。
次回予告
装飾品やモール、ガラスをバラしながら、ボディ全面の研磨に入っていきます。剥げば剥ぐほどサビが顔を出す洗礼も受けました。
次回「ハコスカ全塗装②」もぜひチェックしてみてください。





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