前回の続き(ハコスカ全塗装2)
① 前回のおさらいと今回やること|どの工程まで来ているのか確認しよう
今回はシリーズ第3回です。
初めて読んでくれた方のために、全体の流れをざっくり整理しておきます。
📋 ハコスカ全塗装の全工程ロードマップ
- 旧塗膜の剥離 ← 今回はここ
- パテ除去・素地出し ← 今回はここ
- サビ処理・防錆下地
- サフェーサー塗布・研ぎ
- 塗装
- 磨き・仕上げ
今回は最初の2工程、クオーターパネルの旧塗膜を剥がして、素地(鉄板の生地)を出していく作業です。
地味に見えますが、ここが一番大事といっても過言じゃありません。下地作りは手を抜けない工程です。
② サーフラインが波打っていた|旧車のボディで”歪み”が起きやすい理由
クオーターパネルをよく見てみると、サーフラインがはっきり波打っているのがわかりました。
「わかりますか?」って聞きたくなるくらい、僕には丸見えでした。
曲がったことの嫌いな板金屋からすると、正直発狂もんです(笑)。
サーフラインとは何か?なぜ真っ直ぐであることがそんなに重要なのか
サーフラインとは、車のボディ側面に入っている「キャラクターライン」の一種です。ざっくり言うと、ボディに意図的につけられた稜線(りょうせん)のことです。
ハコスカでいえば、ドアからリアにかけて通る横のラインがそれに当たります。このラインが真っ直ぐキマっているだけで、車全体の印象がびしっと引き締まります。
逆に少しでも波打っていると、光の当たり方でもろに歪みが目に入ってきます。旧車の場合、何十年もの間に繰り返された修理や板金で、このラインが崩れていることが多いんです。
今回のハコスカも、パテが何層も盛られた結果、ラインがぐにゃりと歪んでいました。まずここを研ぎ直してラインを整えることから、作業をスタートしました。
📖 もう少し詳しく|サーフラインの狂いを見つける方法:当て板・光・自分の目
サーフラインの歪みを見つけるには、光を斜めに当てながら目を低くして確認するのが基本です。スタンドライトを斜め45度で当てて、ボディを低い位置からのぞき込む方法がよく使われます。
もう一つ有効なのが、長めの当て板(サンディングブロック)をラインに沿って当てる方法です。当て板が浮いたり引っかかったりした箇所が、高い部分・低い部分のサインになります。「なんか違和感あるな」という直感を、道具で裏付ける。この繰り返しが真っ直ぐなラインを作る近道です。
③ ちぢれが出た…ラッカー全塗装が後の施工者を苦しめる仕組み
サーフラインを研ぎ進めながら、途中でちぢれの確認をしました。結果は…またしてもちぢれあり。
「またかよ」って、思わずため息が出ましたよ。このハコスカ、前の塗装がラッカー系だったんです。
ラッカーで全塗装されていると、後から施工する職人がとにかく苦労します。ペーパーの消費量も作業時間も、通常より大幅に増えることになります。本当に、ラッカーでの全塗装はやめてほしいですね……。
ちぢれとは何か?なぜラッカーの上に塗ると起きるのか
ちぢれとは、旧塗膜が新しい塗料の溶剤に反応して膨れあがり、シワシワに縮む現象のことです。わかりやすく言うと、セロハンが熱で収縮するイメージに近いです。
ラッカー系の塗膜は、ウレタンや2液型塗料と比べて溶剤への耐性が低い特性を持っています。そのため、上から強い溶剤を含む塗料をのせると、旧塗膜が溶けて収縮を起こしてしまいます。
一度ちぢれが出てしまうと、その上から塗っても必ず表面に浮き出てきます。ちぢれが出た部分は削り取るしか方法がなく、それがペーパーと時間の大量消費につながるんです。
ちぢれを事前に確認する方法|現場でのテスト手順
本格的に塗料を吹く前に、ちぢれが出るかどうかを確認する方法があります。目立たない部分に、これから使う塗料を少しだけ吹きかけて、数分待ちます。
旧塗膜がシワシワと縮んできたらちぢれあり、縮まなければ重ね塗りできると判断します。今回も確認しましたが、やはりちぢれが確認されました。面倒でも、このひと手間で後の大きなトラブルを防げます。必ずやるようにしています。
📖 もう少し詳しく|剥離剤を使う選択肢とリスク:洗い残しが引き起こすトラブルとは
塗膜をごっそり落とす方法として、剥離剤(ペイントリムーバー)を使うやり方もあります。塗膜が分厚い場合や、広い面積を一気に処理したい場合には有効な手段です。
ただし、剥離剤の成分が車体の隙間や溶接部分に残ってしまうと、後々のトラブルの原因になります。残留成分がパテやサフェーサーの密着を妨げることがあるためです。
僕の現場では、その洗い流しリスクを考えて、剥離剤は基本的に使わない方針にしています。研ぐのは大変ですが、確実性を取るならペーパーで地道に剥がす方が安心です。
⚠️ 注意:剥離剤を使う場合は、車体の隅々まで完全に洗い流すことが必須です。洗い残しはパテ・サフェーサーの密着不良を引き起こします。
④ シングルサンダーとダブルアクションサンダー、パテ削りにはどちらが正解か
ちぢれが出た塗膜を剥がし終えると、下からパテが大量に出てきました。
「パテだらけやん……」って、さすがにひるみましたよ。こうなったら覚悟を決めて、ゴリゴリ削り取るしかありません。
ここで道具をダブルアクションサンダーからシングルサンダーに切り替えました。
ダブルアクションサンダーを塗膜剥ぎに使う理由|熱と絡みを抑えるための回転制御
ダブルアクションサンダーは、回転と偏心運動(中心をずらしながらぶれて回る動き)を組み合わせたサンダーです。この動きのおかげで、研削面への熱の入り方が分散されます。
回転スピードを落として使えば、塗膜がペーパーに絡みにくくなり、ペーパーの交換頻度を抑えられます。
実際、僕もこの特性を知ってからは塗膜を剥がす工程では迷わずダブルアクションサンダーを選ぶようになりました。ペーパーのコストと作業時間の両方で、体感として差が出ます。
シングルサンダーをパテ削りに切り替えるタイミングと番手の選び方
シングルサンダーは一方向に回転し続けるサンダーで、削り取るスピードがダブルアクションサンダーと比べて速いのが特徴です。ただし、熱の発生も早く、低回転でもすぐに熱を持つ特性があります。
塗膜のように溶けやすい素材にはペーパーが詰まりやすい一方、硬化したパテは塗膜よりも熱絡みが起きにくいです。剥がすべき対象がパテに変わった段階で、シングルサンダーに切り替えます。
番手は80番を選びました。60番だとパネルに残る傷が深くなりすぎて、後の研ぎ工程での修正に時間がかかります。逆に120番では削り取りが遅くなります。80番がこの工程での除去効率と傷の深さのバランスを取りやすい番手です。
📖 もう少し詳しく|今回使ったシングルサンダー:コンパクトツール 715A2(バーティカルポリッシャー)
今回のパテ削りで使ったのは、コンパクトツールの「715A2」です。バーティカルポリッシャー(縦型のシングルアクションエアポリッシャー)と呼ばれる機種で、グリップを縦に握って使うタイプです。
回転数は3,000RPM、パッドサイズはφ123。一方向に回り続けるシングル動作なので、パテのような硬い素材をゴリゴリ削り落とすのに向いています。重量1.2kgと取り回しがしやすく、広い面積を削り続ける作業でも疲れにくいのが助かっています。
同タイプの道具が気になる方は参考にしてみてください。
⑤ 剥いでみたら面積80%が錆だった|旧車のクオーターが”こうなる”理由
パテを削り取ってみたら、出てきたのは錆、錆、また錆。クオーターパネル全体の、およそ8割が錆で覆われていました。

「高い旧車でもこうなるのか」と、改めて旧車の現実を思い知らされた瞬間でした。
旧車は世代をまたいで何人もの手に渡っていきます。どこかで誰かが問題を抱え込んで、それが次のオーナーへと引き継がれていくんです。今回もまさに、そのパターンでした。
パテ浮きの本当の原因は錆ではなく錆止め剤だった?現場での発見と考察
剥がしながら「なぜパテがここまで浮いていたのか」を考えていました。最初は「サビが膨らんでパテを押し上げたんだろう」と思っていたんですが、どうも様子がおかしい。
パテを剥いだその下に、薄い黒い膜があったんです。しかもその膜は、ところどころ指で触れただけで簡単に剥がれる状態でした。
この膜は、以前に塗られた錆止め剤の層だと思います。錆止め剤の上から直接パテを盛っていたとしたら、錆止め剤の膜ごとパテが浮いてきてもおかしくありません。
サビそのものよりも、その上に塗られた錆止め剤との密着不良がパテ浮きの原因だったんじゃないか。これが今の僕の見立てです。あくまでも現場での観察をもとにした予想ですが、状況証拠は十分にそろっていました。
錆止め剤の種類とパテ下に使う際の注意点|密着不良を起こしやすい条件とは
錆止め剤には大きく分けて、油性浸透型・水性型・エポキシ系などがあります。それぞれ特性が違い、下地への密着性や上塗り適性も異なります。
エポキシ系の防錆プライマーは、パテや塗料との密着性が高く、下地処理に向いているとされています。一方、缶スプレータイプの油性錆止め剤は手軽に使える反面、厚塗りすると乾燥不良や密着不良のリスクがあります。製品によって特性が異なるため、使用前に必ずデータシートを確認してください。
⚠️ 注意:錆止め剤の上から直接パテを盛ると、密着不良でパテごと剥がれるリスクがあります。錆止め剤の種類と適用範囲を必ずメーカーの仕様書で確認してください。
今回の車体で見つかった黒い膜がどの種類の錆止め剤だったかは断定できませんが、密着不良を起こしていたのは間違いありません。パテを盛る前の下地処理は、手を抜くと必ず後で泣くことになります。
⑥ 今回の施工で学んだこと|旧車を受け入れる前に確認すべき3つのポイント
今回の作業を振り返って「受け入れ前にここを確認しておけばよかった」と感じたことをまとめます。同業の方にも、DIYでやろうとしている方にも、ぜひ参考にしてもらえると嬉しいです。
⑦ 次回予告|素地が出たら次はパテ。アール・逆アールとの長い戦いが始まる
今回でクオーターパネルの素地出しはほぼ完了しました。次回はいよいよパテ打ちに入ります。
ただ、これが一筋縄ではいきませんでした。広範囲にわたるパネル全体のアール(外に膨らむ曲面)と逆アール(内側に入る曲面)を、納得いくレベルまで研ぎ続ける作業は、想像以上に日数を要しました。
「もうええやろ」と思っても、光の当て方を変えるとまだ歪みが見える。その繰り返しです。次回はそんな泥臭いパテとの奮闘記をお届けします。
今回はいかがでしたか?高い車でもこのように悲惨なことになってることがほとんどです。旧車は特に世代を超えて様々な人に渡っているので、どこかで誰かが痛い目に会うことになりますね。



コメント